授業を行う先生へ

・本教材シリーズでは、善悪がはっきりしない状況や、つい見落とされがちな問題を積極的に取り上げ、リアリティのある物語として描いています。本教材をとおして、一人一人がいじめゲームのルールを変えるチェンジャーズとなっていってほしいという願いのもと制作をいたしました。

・教材を見れば、子どもたちからは何か言いたいことが出てくるはずです。子どもたちによる話し合いを中心に授業を進めてください。話し合いの時間をできるだけ多くとれるように、短めの尺の中で問題点を具体的に描いています。すぐに答えが出ないような難問についてねばりづよく話し合いながら、他者への想像力を養っていってほしいです。

・授業中は、子どもの話を丁寧に聞いたり、もやもやに共感したりする時間を大切にしてほしいです。「こうすべき」という結論を急がず、本音が出されることや、多様な意見が出されること、少数派の意見を丁寧に聞くことなどを大事にしてほしいです。

・オープンエンドで終わることを想定していますが、「本時では多様な考えが出されてよかった」というだけではなく、「これから自分(たち)には何ができるだろうか」と今後の生活につながるような終末を目指したいと考えています。授業時間内に1つの結論を出す必要はなく、これからチェンジャーズになるためのきっかけを掴んでもらいたいと思っています。

・モデル指導案を掲載しておりますが、クラスや子どもたちの実態に合わせ話し合いが深まるよう、自由に柔軟に授業を展開してください。1つの教材の中に、複数の問題が描かれており、主人公以外の視点から議論をすることが可能な教材もあります。道徳科、特別活動、総合的な学習の時間など、様々な教科等でご活用いただければ幸いです。

【プロフィール】

古本ゆうや(ふるもとゆうや)

滋賀県出身
2013年〜2016年 漫画アプリcomicoで連載
2017年〜2020年 児童書、学習漫画を執筆、出版
「謎解きハンターQ」シリーズ(オフィス303編集、PHP研究所)「新世紀食糧記ムシグルメン」(PHP研究所)
「10代からのビジネスブック」(オフィス303編集、河出書房新社)
2021年から「月刊コロコロコミック」(小学館)で「逆襲スパイ Xキャリバー」、 「ちゃぐりん」(家の光協会)で「ちゃぐりんあぐりスクール」を連載中

【作者コメント】

テーマと物語のプロットを拝見した時点で、自分の中で強い既視感を感じました。というのも、バスケ部に所属している主人公が、同級生からノリでネタを披露してしまうという展開は、自分の中学時代の実体験そのものだったからです。執筆当初は当時の記憶を思い出したこともあり、ちょっと複雑な思いもありましたが、過去の自分があったからこそ、主人公に感情移入しながら描けたと思います。特にコマが進むにつれて徐々に変化していく人物の表情はこだわっています。今まさに、似たような境遇にいる子どもたちに共感してもらいたいのはもちろんのこと、友だちをいじっている子どもたちも、相手の気持ちが想像できるようになる、そんな一歩踏み込んだ授業の役に立てられたら光栄です。

いじめといじり、どう違う?

部活同調圧力 いじり

「いじり」という言葉が、私たちの日常の中で気軽に用いられるようになりました。いじりによってコミュニケーションが円滑になるという声もありますが、現実には、いじられる側が苦痛を感じたり我慢を強いられたりすることも少なくありません。いじられる側が「空気を壊したくない」という思いを抱くこともあり、問題が見過ごされてしまうこともあるでしょう。
本教材では、主人公が友人からいじられ始め、もやもやした気持ちを抱えながらも「いじられキャラ」を受け入れるか悩む様子が描かれます。主人公の悩みに寄り添いながら、日常の中でいつの間にか生じてしまう「いじりゲーム」のルールをどうすれば変えていくことができるのか、クラスでの話し合いを深めていってほしいです。

対応する教科等  道徳:相互理解、寛容 / 正直、誠実 / 自主、自律、自由と責任(中学校) 特別活動

作者:古本ゆうや

脚本:阿部 学 | 映像制作:303BOOKS
※指導案・作品台本は以下からダウンロードなしで直接閲覧可能です。
 指導案  台本

いじめといじり、どう違う?

道徳:A-2 正直、誠実
(関連内容項目 B-11 相互理解、寛容)

山崎 智子 先生

千葉県旭市立干潟小学校

ねらい

ジュンと友達のやりとりについて話し合うことを通して、自分の気持ちに正直に向き合おうとする実践意欲と態度を育てる。

教材の視聴時間が短く、話し合いの時間を多くとることができたのはよかったと思います。導入では「いじり」についてそれぞれがもつイメージを共有しました。児童は、「いじり」について今まで深く考えたことがなかったようでしたが、今回の学習を通して「いじり」が「いじめ」につながることを感じた児童は多かったようです。また同じ行為をみても、「これはいじめだ」と捉える児童や「これは遊びだよ」と捉える児童もおり、感じ方や考え方が人それぞれであるという相互理解の視点で考えることもできました。今回は、クラスの実態を踏まえ「正直、誠実」の内容項目で授業を行いました。一人一人が自分だったらどうするかを考えながら、言えないでいるもやもや感や、自分の気持ちに正直に生きていくことの良さ、すがすがしさを感じ今後の生活につなげていこうとする意欲が振り返りの記述から見られました。

一生懸命じゃいけないの?

学級委員長として一生懸命がんばる美月(みづき)は、ふざけるクラスメイトを強く注意したことで、皆から反感を買ってしまう。副委員長の小花田(おはなだ)は、美月とクラスメイトとの間で、自分がどうすべきか思い悩む…。

同調圧力 傍観者

自分のSNSなら何を書いてもいい?

サッカー部の夏の大会は、オサムのPK失敗により終わってしまった。もやもやした気持ちを抱えるトモノリは、自分のSNSのプロフィール欄に、間接的にオサムの悪口を書く。書き込みをした瞬間は気が晴れたトモノリであったが…。

ネットいじめ SNS 傍観者 部活

「決めつけ」が人を傷つける?

ある日、シオリが鞄につけていたマスコットがなくなった。クラスメイトは憶測でミユが盗ったのではないかと言う。母親からは「その子とは関わらない方がいい」と言われ、シオリはミユとの付き合い方に悩む…。

家族 友達 思い込み 傍観者

白熱するオンラインゲーム

マサルたち仲良し4人組は、オンラインゲームにハマっている。最初は楽しく遊んでいた4人だったが、白熱するあまり暴言が飛び交うようになる。そうした雰囲気が好きではないマサルは、ゲームが楽しくなくなってきていることに気づく…。

オンラインゲーム コミュニケーション 言葉づかい

男女で遊んじゃいけないの?

小学生の美咲(女子)は、いつも男子たちとカードゲームで遊んでいる。ところが、同じクラスの女子グループはそんな美咲のことをよく思っていない。美咲は、女子グループに「男子じゃなくうちらと遊ぼう」と言われ困惑する…。

ジェンダー カードゲーム 同調圧力

親には心配をかけたくない

合唱コンクールの指揮者になったシンペイは、一生懸命がんばろうとするあまり、クラスメイトから反感を買ってしまう。「学校に行きたくない」と思うシンペイだが、指揮者になったことを喜び期待してくれている母親に、そのことを言い出せない…。

SOS SNSいじめ リーダーシップ マザーコンプレックス 子離れ

大ごとにはしたくない

小学生のミナミは、クラスメイトから容姿についての悪口を言われている。ミナミは、担任の先生や親にそのことを相談しようかと一度は思うのだが、「相談をしたら、大ごとにされてしまうかもしれない」と想像し、ためらってしまう…。

SOS 容姿いじり ルッキズム

みんなでそろえたマスコット

ヒマリ、ユイ、リコ、メイは、演劇部の仲良し4人組。いつも一緒に行動していたのだが、ユイが次の公演の主役に抜擢された時から、なんとなくイヤな空気が流れ始める。ある日の帰り道、遅れてきたユイは、他の3人がおそろいのマスコットを付けていることに気づく…。

部活動 仲間外れ 同調圧力 ほのめかし おそろい

先輩には何も言えない

中学1年生になったマリアは、念願だったバスケ部に入部し、練習に励んでいた。ところがある日、悪気なくあいさつを無視してしまったことが原因となり、先輩たちから強く当たられるようになってしまう。同期の友人たちはマリアに同情するものの、みな、先輩には何も言えず…。

部活動 上下関係 年功序列 しごき ハラスメント 挨拶